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「高校生のための素粒子物理学」としてまとめました。



「物が見える」という事はなぜだか考えてみましょう?
まず「目」はなくてはなりません、光も必要です。それと見るべき物体と。

この三つで「物が見える」という現実が構成されているはずですね。(1) どこからか光が来るとして、(2) 物体に当たって光は跳ね返ります。(3) その光が目に入ります。(1) - (3) の繰り返しが行われます。こうして多数の光が物体のまわりのいろいろの部分で反射(跳ね返り)されて反射光の一部が目にはいり物体の外形を認識させてくれ ます(ここで光が目でどのように受光され、脳に伝わり認識されるのかの過程にはふれません)。この「物を見る」過程には、「放射線」が現れています。広い 意味で光は放射線です。ところでこの光そのものを見ることはできますか?我々は物体がそこに在る事を見るために光が必要であると述べましたが、この事情を 仲介をする光も当然物体であるべきですね。ではその光はどうやって物体としてその存在を認められのでしょうか?あるいは見えない物があるとしたときその存 在はいかにして人々に認められるのでしょうか?物体をみるという作業は、光を使って衝突実験をしていると、研究者は考えています。これを光の代わりに粒子 を用いても同様の事ができると、当然考えます。これが「衝突実験」です。

こうして図の"?"の中になにがあるかを探る事ができます。たとえそれが直接見えない物であったとしても。すなわち、(1)では全ての粒子はまっす ぐ進み素通りしますから、「なにもない」事がわかります。次に(2)では中の赤い粒子のみが跳ね返されてくるので、壁のような物で、大きさは青や紫との距 離より小さいと考えます。(3)では中にある物体は、大きさは(2)と同程度ですが、形が壁と言うより丸か三角に近いと考えられます。 この様にして衝突実験により大きさや形を推定する事ができます。現代の加速器を用いた高エネルギー物理学のやり方はこれを使っています。 例えば、原子核の存在は「光を当てて見る」という作業では確認ず、アルファー粒子という粒子を原子の衝突により実証されました。

自然はなにでできているか?物質を構成する根源物質はなにか?という問に対してより小さな基本構成粒子を追い求めて来た人類の探求は、古来はデモク リトスの原子論から、19世紀終わり頃にメンデレーフの原子の周期律表の完成に至りました。

100種類以上も確認された性質の異なる原子が質量や電荷について周期性を持つことを、(現代的解釈では)原子内の基本構成粒子として2種類(質量 のほぼ等しい電荷のみ異なる陽子と中性子)で説明する可能性を示しました。またすでに放射線の分類 から目には見えないが、電荷やエネルギーも持った存在が確かめられていました。これらは陽子や中性子とは異なるもので電子やg線(あるいはX線とも呼ばれ る電磁波)でした。人の大きさ(1m=100m)から細胞の大きさ(10^-5m: 10のマイナス5乗メートルつまり10万分の1メートル、以後この上向き矢印でベキ乗を示します)を経て原子の大きさ(10^-10m: 10のマイナス10乗メートルつまり100億分の1メートル)を見ることができるようになったと いっても過言ではないでしょう。(中性子の発見は、歴史上では原子核の発見より後ですが、ここでは現在の知識を統合した解釈として上の原子の基本構成粒子 としています。)

この人の目に直接は見えない原子の世界で、さらにその中身はどうなっているのかという疑問はラザフォードらの実験により解明されました。すなわち原 子の中を「見る」作業が光を用いるのではなく、

原子核そのものを用いる事により達成されました。すなわち、図に示すようにa線(実は2価の正の電荷を持ったヘリウムの原子核で自然放射能のなかに 存在する事が知られていました)を見たい原子にぶっつけたのです。ここで想像してほしいこ とは、例えば自転車がダンプに衝突するとおそらく自転車に乗っていた人は後ろにとばされるであろうということです。これとよく似たことがこの場合も起きま す。つまりa線は原子の中にあるa線より圧倒的に質量も電荷も大きい何者かによって後ろへ跳ね飛ばされる事がわかりました。逆にもし原子内には陽子や中性 子というa線より質量も電荷も小さな物体がうようよしているならば、自転車が小石をはねとばすように(自転車は前にすすみ続けますね)、 a線は進行方向をほとんど変えることは無いでしょう。実験結果は質量及び電荷の大小関係についてa線より大きな中心が在ることを示していました。この原子 内で質量と正の電荷の全てを背負った一つのかたまりを原子核と呼んでいます。原子核の大きさは、これらの実験から10^-14m程度と推定されました。原 子の大きさ(10^-10m )と比較すると、原子核の大きさは1万分の1で、いかに原子の中はすかすかであるか実感できると思います。原子核という小さな所に陽子と中性子が非常に大 きな密度でかたまっているのです。この実験と考察は、以後どんな物質が中に詰まっていて、どの様に分布しているかを確かめるのために、外から勢いのある物 体をぶつけて問題となる物体を衝突によりたたいたりバラバラに壊したりするという荒々しい方法をあみ出したという意味で画期的でした。

次に自然な成り行きとして、はたして陽子や中性子を構成する物質は存在するか?という疑問がわき起こりますね。原子核の存在実験と同様に考えるなら 再び陽子は中性子になにかをぶつける実験をすればよいと考えられます。問題は、原子の中の更にその奥の原子核の中に入り込み、陽子や中性子と衝突するに は、大きなエネルギーを持った粒子をぶつけなければならないことです(原子核の周りにある電子や原子核の中での影響を受けることなく陽子や中性子までつっ こんで行ける「勢い」みたいな荒々しさです)。自然界に存在する放射線ではエネルギーが不足していたため、粒子加速器が用いられました。この結果、現在で は陽子や中性子の中にやはりこれらを構成する更に小さい物体が存在すると信じられています。これをクォークと呼んでいます。 ここで信じるなどというあやふやな表現をしたのは、未だにクォークを単体で取り出した実験はないからです(原子核に荒々しい衝突を起こさせると中からその 構成粒子である陽子や中性子が飛び出してくるので、 原子核の中に陽子や中性子が入っていることがすぐにわかりますが、クォークは飛び出してきません。現 在までどんなに大きなエネルギーでたたいてもクォークが飛び出してきたことはありません)。そのため、クォークは陽子や中性子から単体で絶対外にでてこな いという説があります。

例えば、クォークは「ひも」の端の断面であると考えてください。「ひも」とは粒子の事です。この「ひも」が一本でできていれば、必ず両端があるの で、クォーク2つ(正確にはクォークと反クォークの組)の粒子ができあがります。陽子や中性子のような粒子は、3つのクォークでできています。これは、図 のような形をしているでしょう。どこかをの「ひも」を切ると、必ずその断面にクォークと反クォーク対が現れ断面一個だけで存在する事ができないのです。こ れは一つの説明例です。

クォークのアイディアと平行して粒子加速器が次々と作られ、次々と今まで知られていなかった寿命の短い粒子が発見されました。この意味でこれらの新 粒子を統一的に説明する手段がクォークです。つまり100種類以上もの新粒子の時代をたった6種のクォークの組み合わせで説明できるのです。

  基本構成粒子の問題

クォークの存在とその謎を探求することが現在の物理学の中心の一つです。陽子や中性子はそれぞれ3個のクォークでできていると考えています。すると 単純にクォークの電荷は陽子の三分の一ということになります。いままで誰も(ミリカンの実験では電荷と質量の比を測定しましたが)陽子や電子の電荷の分数 倍の電荷を発見した人はいません。クォークが外にでてこないなら発見したことがないのもうなずけます。物質を構成する原子からその中に原子核が存在しその 構成粒子にちょっと奇妙な性質を持つクォークのアイディアに至りました。

ところで原子核の周りにある電子はクォークとは全く別物に見えます。しかしそもそも電子と陽子の電荷が反対で絶対値が正確に等しいのはなぜでしょ う?電子と陽子あるいはクォークは質量も全く異なり、違う物体に見えますが、電荷に関してこのように強い関係があります。現在の認識では両者は別物です が、実は基本的には同じ存在が別の見え方をしていると考えている人たちもいます。この意味で、いま世界を構成する基本粒子は、クォークと電子などの一族の 総称であるレプトンだと考えています。

さらに実はクォークは自然界に6種類あることがすでに粒子加速器を用いた実験から解っています(最近のニュースで、6番目のクォークである「トップ クォーク」が見つかったことが報じられたのを覚えている人もいるでしょう。 クォークの電荷が電子の2/3倍や-1/3倍になっているのはいかにも人間の作り出した、不自然とも取れます。 せっかく100種類以上もの原子をたった2つの陽子と中性子で説明する事ができたのに、また基本粒 子の数は増えてしまい、我々の目指すより単純な構成物によるこの世の説明から現在は少し遠ざかっているかもしれません。ただし我々の生活する世界において 我々に関係するクォークは2種類(uクォークとdクォーク)だけです。他の4種類は粒子加速器により人工的に作られ、短い時間だけこの世に存在しうる粒子 です。発見されたクォークとレプトンの質量をグラフにしてみると図のようになります。基本構成粒子であるクォークはu,d,c,s,t,bという名前がつ けられています。uはアップ、dはダウン、cはチャーム、sは ストレンジ、tはトップ、bはボトムの略です。一方のレプトンはe,mu,tau(eは電子、muはミュー粒子、tauはタウ粒子)です。レプトンは クォークと同じように対をなしており、ニュートリノがそれぞれ存在します。電子の対は電子ニュートリノで、ミュー粒子の対はミューニュートリノで、タウ粒 子の対はタウニュートリノと呼ばれています。

ですから100種以上の原子の構成に関してはやはり2種のクォーク(uクォークとdクォーク)で説明できます。またこのように構成物質の組み合わせ 問題を考えている限り基本構成粒子の数が増えてしまいますが、エネルギーの高い衝突現象による種々の粒子の生成消滅現象というダイナミックな世界では、粒 子同士の相互作用を記述するために基本粒子の数そのものより自分自身も含めたお互いの相互作用が一般化(簡単に記述)されていることの方が重要です。

さらに我々に身近にある2種のクォークはどうもほかの4種(2種を2回)とは質量のみ異なり基本的に同じ性質をもっていることが解ってきました。つ まりこの世界が、基本クォークおよびレプトン(2種)とそのコピーを2回(これを世代と呼んでいます)繰り返してでできているようなのです。合計6種類以 上ではないことも実験的に解っています。この3回の自然の繰り返しは何を意味する物なのでしょうか?

クォークやレプトンの大きさに関してはは、現在の所10^-17m以下であると言うことしか解っていません。

力の問題

電磁力すなわち電荷が正の粒子と負の粒子が引き合う(お互い同士に引力が働く、あるいは電荷の正の粒子と正の粒子は反発する:お互い同士に斥力が働 く)ことはなじみ深く知っていることでしょう。原子核の中に陽子(電気的に正の粒子)と中性子(電気的に中性の粒子)が小さな所に集中している事実は明ら かに電磁力では説明できませんね。電磁気力よりはるかに強い力が存在し原子核のような小さな世界に陽子や中性子を結びつけていると考えられます。この力を 「強い力」と呼びます。また中性子がベータ崩壊するという事実も知っていると思いますが(自然界の放射線の源の一つですね)、粒子がバラバラびなって見た こともない粒子がその過程で現れる訳ですから、当然ある力が働いたことになります。この力を「弱い力」と呼んでいます。 ベータ崩壊は非常にまれにしか起こらないため、力の大きさは弱いと考えたためです。そのほかに我々がもっとも身近に感じる力は、重力ですね。この根源は、 質量があること、そして質量があれば引き合うすなわち万有引力であることも知っているでしょう。いまあげただけでも力として4種類の異なる存在があること が知られています。

ではいったい力とはなんでしょう?私たちに身近な力は、接触によって伝わります。物を押したり引いたりする事です。ところが微少な粒子の間に働く力 は、そのような接触をする時間などとうてい考えられませんから、全く別の見方をする必要があります。また重力のように明らかに力は真空中も伝わります。現 在では、力とは粒子のキャッチボールのような事だと考えています。すなわち一方の粒子が力を伝える粒子を放出します。そして他の粒子がこれを受け取ると放 出粒子分の運動量を受け取る事になります。運動量の変化はすなわちこれ力積(力x時間)ですから、力が伝わった事となります。 例えば陽子の中ではクォークとクォークの間に力を伝える粒子(グルーオン)がいつもやりとり(行き 来)されておりクォークとクォークは離ればなれになるこ とは無く陽子として存在し続けます。また原子の中では原子核と周りにある電子の間で電磁力を伝える粒子(光子)がやりとりされ原子を安定にすることができ ます。このように粒子のやりとりに応じて力が伝わっていると考えておます。そしてこれらはやはり物質粒子であり、我々の宇宙を構成するクォークとレプトン 以外の第3の粒子族を形成します。

粒子加速器

物質の基本構成物質を探してより小さな存在を追い求めてきた人類の探求は、今まで述べてきた所が最先端です。より小さな世界を探るためには、より大 きなエネルギーが必要である事はすでに述べました。まるで禅問答か人を矛盾に陥れるわなの様にも聞こえますが、自然の探求はこの仕組みに支えられてここま で進歩してきました。自然界に存在する放射線の理解とこれを用いて原子の構成を探求し原子核の存在を突き止めました。これ以上細かな存在を「みる」ために は、より大きなエネルギーを一個の粒子に与えなければなりません。このためテレビ受像器のブラウン管と同じ原理つまり電場(2枚の電極の間に電圧をかけて その)間に置かれた電荷を持った粒子は電場により引っ張られて加速されエネルギーを得ます。加速器を円形にして一つの粒子が加速される場所を何万回も通過 できるようにすれば目指す高エネルギーの状態に粒子を加速できます。水平面内を円形に回るために電磁石により鉛直方向に磁場がかけられています。これが円 形加速器の基本的な原理です。

現在世界最大の粒子加速器は、アメリカとスイスにあります。アメリカの加速器はテバトロン(TEVATRON)という名で、陽子とその反粒子である 反陽子をそれぞれ反対方向回転させ正面衝突させる型です。またスイスにある加速器は、レップ(LEP)と言う名で電子と電子の反粒子である陽電子をやはり 正面衝突させる型のものです。

粒子同士を反対方向に走らせ(回転させて)正面衝突を起こさせる事により、止まっている標的粒子(例えば原子核を見つける実験になぞらえれば、原子 が標的粒子に対応し、α粒子が加速される粒子に対応します)に加速された粒子をぶつけるよりも圧倒的に多くのエネルギー利用する事ができます。これは止 まっているいる車とこれに衝突する車の事件より、双方が走っていて正面衝突する場合の被害が圧倒的に大きい事からも想像できるでしょう。そのうえ自動車同 士程度では問題になりませんが、粒子のように光速に近い速度の場合は相対性理論の効果が大きくこのことを一層際だたせます。

テバトロンの場合直径が約2kmの装置で円周6kmにわたって約50 k G (キロガウス)の磁場をかけて円形軌道を保っています。今の超伝導技術をもってしてもこのような大磁場は発生させることのできる限界に近いものです。約 10年後に完成される予定の(おそらく人類最後の)超大粒子加速器は円周27kmで約100KGの磁場を必要とします。(円周27kmとは、山の手線一周 に相当します)

またレップの場合、電子や陽電子を円形加速器の中で回すために、陽子とは大きく異なった事態に陥ります。それは電子自身の質量が小さいためにちょっ と加速度を受けると自分の周りのうようよしている光子を振り落としてしい、エネルギーを失ってしまうことです(これはシンクロトロン輻射として知られてい ます)。この結果電子は加速部の電場により加速されますが、円形加速器の中を一周回っている途中で自分のまわりの光子がおちてしまいエネルギーを減少させ て加速部へかえって来ます、このため何度回ってもちっとも電子自身は加速されない事態が生じます。このためレップは直径9km(円周27km)のでなるべ くなら曲がらないように(曲がると加速度がかかるためですね)大きく作られています。実は陽子の次期加速器はレップのトンネル内に設置されるため、両者は 同じ大きさです。地下100 mのトンネル内に作られたレップお全体図を示します。

こうして人類の得られる限り高いエネルギーの粒子を作りだし両者を衝突させて(後で述べる)ミニ・ビッグバンのような火の玉を人工的に作り出し物質 の根源の探求に迫ろうとしています。

放射線についての現代理解をお話ししてきました。まだまだ分からないことがたくさんあります。この先も同じように努力しさえすれば世界の理解は進む ものでしょうか。それともどこかに大きな壁のようなものでもあってこれより先一歩も進めない事態が出現するのでしょうか。哲学的な問いかけに聞こえるかも しれません。例えば自然界の物質の構造の階層的繰り返しは実は無限に続くものであり我々はその最初の数回分を見ただけであるという説を現状では否定する事 ができません。これに対して自然科学はあくまで実証を基本とする態度で問題に挑んでいます。

一つはもちろん今までの研究の延長線上としてよりエネルギーの高い粒子加速器を建設して物質の内部構造を探るやり方です。しかしすでに述べたように 次期加速器の巨大さを考慮すると、限界がきているとも考える事もできます。そこで、

別のやり方でこの問題に当たって見ましょう。すなわち現在理解された事実を総動員して超高エネルギーの世界を理論的に考察することができます。この アプローチは我々の宇宙(世界)ができた時まで宇宙の歴史をさかのぼる作業にほかなりません。我々の住むこの宇宙は、約150億年前にある種の火の玉とし て誕生したと考えられています。この火の玉は今我々が探究したい超高エネルギー状態です。この状態は宇宙の進化すなわち宇宙の年齢と共に変化して現在に 至っています。そして宇宙のより遠くを見るという作業は宇宙の過去を探ることでもありますから(光の速度は有限な一定値ですから)、この宇宙の観測が宇宙 の始まりについての深い理解をもたらし、ひいては物質の究極の構造に関して決定的な情報を与えると期待しています。すなわち宇宙の始まりの研究と素粒子の 究極構造の研究は互いに強い関係を持っています。このように自然を理解す ることを目標とする物理学は極小を目指す素粒子物理学と極大の宇宙を探る宇宙物理学へ分化していますが、最終的に到達するべき点が再び同じになろうとして います。一見奇妙な結び付きで極小と極大の世界を相互理解できる期待が広がっています。

宇宙の始まりを時刻ゼロとして話を始めて見ましょう。とにもかくにも火の玉として我々の宇宙が生まれたとしましょう。この開びゃく説は、我々の見上 げる夜空がこうこうと輝いていないのはなぜか(オルバースのパラドクス)?にも答えることのできますね(現在の宇宙が無限に広く星があまねく存在している ならば暗い夜空はありえません)。宇宙に始まりがあり始まった瞬間から光が存在し始めたわけであり、我々の見る宇宙は開びゃく以前を見てはいないので見て いる星の数は有限ですから夜空に暗い(星のない)部分が存在します。さて生まれた直後での宇宙の大きさは、10^-36m位でした。さて生まれたばかりの 我々の宇宙には、なにもありません。エネルギーだけが満ちていたでしょう。その後すぐ(10^-44秒)で大きさは10^30倍、といっても10^-6m になります。これをインフレーションと言います。この膨張の速さはちょっと異常です。なぜなら光速より速い。しかしこの速さは物質が移動する速度ではな く、空間そのものの拡大のスピードであり、相対性理論と矛盾する事ではありません。さてこの時刻(10^- 44秒)には万有引力が生まれています。このおかげで我々の宇宙は空間3次元時間1次元になりました。このころエネルギーの一部は電子や陽電子と入れ替 わったり、光子になったり、クォークと反クォークに化けたりその反対になったりしています。これ以降の宇宙の進化をビックバンと呼びます。10^- 36秒で宇宙の大きさは10^-2mです。統一されていたはずの力のうち強い力が独立します。このころ厳密にクォークと反クォークあるいは電子と陽電子の 数は一致していたはずですが、ほんの少し反物質より物質粒子が多いという不一致が生じます。これが我々の宇宙が物質でできている原因です。この後比較的 ゆっくりとした膨張期に入ります。10^-11秒で大きさが10^9m、つまり地球と太陽の距離程度まで大きくなります。このあたりが現在の最高エネル ギー粒子加速器で探ることのできる世界に対応し、弱い力が分化したときでもあります。次に10^- 4秒で10^14mとだいたい太陽系サイズになりクォークが陽子や中性の中からでてこれなくなります。原子核のでき始めです。10^3秒で大きさ 10^20mのころヘリウム原子核ができます、現在のヘリウムの大半もこのころできた産物です。あとは水素原子の誕生を待つばかりです。10^12秒で大 きさ10^23mのころついに宇宙のなかを漂っていた粒子の大半である陽子と電子が安定状態(水素原子)を作るようになるため、急速に宇宙の遠くが見える ようになります、このためこれを「宇宙の晴れ上がり」と呼びます。そしてこのごろ宇宙を飛び回っていた光子はくっつく相手(電子)がいなくなるため、取り 残されてしまいます。これが現在宇宙の3K輻射と呼ばれる宇宙に満ち満ちている電磁波のもとです。水素原子ができてから急速に宇宙のガスが万有引力により 集まり銀河が生まれます。さらに10^17秒(100億年)で太陽や惑星が生まれます。人類の出現は宇宙の150億年の進化の歴史では最後のほんの一瞬で す。この意味で現代の粒子加速器は宇宙開びゃく以来10^-11秒程度のところを見ていることに対応しています。

宇宙の進化を探ることから物質の究極の構造・組成とその間の力の関係が宇宙の進化あるいは時刻と共に変化して行くことが少しは想像してもらえたで しょうか。特に宇宙の進化と共にエネルギー密度(これを温度とも言います:宇宙の大きさの逆数)がどんどん下がって行き、それに連れて宇宙の様子も様変り します。このシナリオでは、実は粒子の最終構成物質は、現在我々が行き着いている最終物質であるクォークとレプトンでした。すなわちこの宇宙の進化のシナ リオが正しいとするならクォークとレプトンはもうこれ以上分解することができない究極の構成物質ということになります。これはもはや高いエネルギーの粒子 加速器を作る必要はなくなったことを示すものではありません。それどころかこの理論の詰めのためにぜひ確かめたいことがあります。宇宙の進化のシナリオに 従えばすごそこで手の届きそうなエネルギーのところにあるというのです。今はなんとエキサイティングな状況でしょうか。

さてこの先宇宙はどうなっていくのでしょうか?ちょっとのぞいて見ましょう。現在は開びゃく以来約10^10年です。この未来は宇宙が「閉じている」 のか「開いている」のかによって大いに異なってきます。

まずは我々の宇宙が「閉じている」場合:10^11年で宇宙は収縮に転じます。こうして今まで見てきた宇宙の姿は全く逆回しにしたビデオのようにどん どん縮んでゆき、それに連れて温度が上がって行きます。そしてビッグバンまで逆に戻って行きます。

次に我々の宇宙が「開いている」場合:基本的に宇宙は無限に膨張を続けます。10^14年:宇宙の光を放つ星はその核融合のための燃焼物質を燃やし尽 くし光を出さなくなります(この結果は質量数の大きな光を出さない原子が残ります)。つまり宇宙は真っ暗になります。10^20年:光らない物質だけで万有 引力により引き合い1ヶ所に集まり、巨大ブラックホールを作ります。10^34年:陽子も寿命がつきて電子などに崩壊し始めます。こうしてブラックホールは 電子と陽電子と光子だけで満たされるようになります。10^64年:ついにブラックホールも安定でいられず蒸発を始めます。10^116年:残されたのは電 子・陽電子対から作られた光子だけが宇宙の構成物質となります。ということで、我々の宇宙は「閉じている」のか「開いている」のかによって未来に大きな違 いが予想されます。

では「閉じている」か「開いている」かは現在の知識では解らないのでしょうか?これは宇宙の曲率のことで、「閉じている」とは、宇宙は球の表面上み たいな事だ、ということができるでしょう。これは実際の宇宙空間が3次元なのですが、これを2次元にしてみたらというお話です。つまり球の表面ではある点 を出発するとまた一周して戻ってくることができます。これが「閉じている」という意味です。また「開いている」とは、再び2次元で考えるなら、平面あるい は馬の鞍の上に我々がいるということでしょうか。どこかへ出発しますが元へ戻ることはありませんね。このような宇宙を「開いている」と呼びます。図に宇宙 の進化の時間と大きさの関係を模式的に示します。現時点の宇宙の観測からは、我々の宇宙は「開いている」とも、「閉じている」ともいえません。

私たちに最も身近な放射線の話を最後にしましょう。今まで述べてきたように広い意味の放射線すなわち粒子や素粒子で我々の体や宇宙が作られおり、周 りにもいっぱい存在します。最も身近なものが光子ですね。物を見るのに無くてはならない存在であることは前に述べたとおりです。これらの光子は電灯などに より簡単に作り出されています(電流などで物体を高温にすると中の電子の振動が光子を振り落としますね)。あまり身近すぎて放射線の一種であることすら忘 れ去られています。常に空から降り注ぐ放射線があります。そ れは宇宙線と呼ばれ、地球の外から降り注ぐ粒子が大気分子原子との衝突によって生成された素粒子たちです(ここでわざわざ素粒子と呼んでいるのは、これら の粒子が基本粒子で電子の仲間であるレプトンであるからです)。なぜなら大気の高い所でできたいろいろの粒子たちはすべて安定な基本素粒子に崩壊してし まって、我々の周りに降ってくるためです(今もみなさんのからだを通過していってます)。みなさんがこれを見たり感じたりする事が無いのはひとえに、宇宙 線粒子が相互作用をほとんどしないし、たとえ相互作用したとしてもその影響は大変小さく感じることができないためです。例えば GM計数管などのような敏 感な粒子検出器があればこれを観測することができます。

次に身の回りを飛び交う放射線には自然放射能と呼ばれる放射性物質の崩壊過程から放出されるα線(陽子2個と中性子2個からなるヘリウム原子核)や β線(電子や陽電子)やγ線(光子あるいは電磁波)があります。

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