宇宙物理学   竹下版

特殊相対性理論
光速一定+慣性系の同等性
   光子は(電子+陽電子)に分解しない
   最高エネルギー宇宙線は<10^20eV
光の速度c=3x10^8m/sが一定であることから、光を用いて遠くの星や銀河を見ることは宇宙の過去を見ることになる。
例えば地球と太陽の距離はL=1.5x10^11m であるので(1AU天文単位)、
t=L/c=0.5x10^3 sec = 500 sec を要する。つまり今見ている太陽の姿は実は500秒前の姿だということである。遠くを見る作業を続けてゆくと、最も遠くを見たくなる。つまり宇宙の最も過去である。現在見つかっている最も遠い銀河は128億光年(光が1年かかって走る距離=3x10^8*365*24*3600=3x10^8x3x10^7
=10^16mです。その写真by SUBARU である。つまり128x10^8 x 10^16m=10^26m向こうにある銀河で、今見ている光は128億年前のものです。すなわちこの銀河は128億年前には有ったということになる。あるいは宇宙は128億年より長く存在している、と。どこまで古いのか?
星あるいは銀河が無い限り光の観測で過去をみることはできない。
宇宙は定常的に不変なのか?とういう疑問がある。
この疑問の答えは1929年のHubbleの観測(あるいはいまや法則)から明らかになった。(パロマー天文台の48インチシュミットカメラを操作するエドウィン・ハッブル:ウイルソン山天文台デ仕事した:)エドウィン・ハッブルが宇宙膨張を発見した100インチフッカー望遠鏡) ハッブルはノーベル賞をもらっていない、当時は天文学はその対象でなかった、しかし彼の死の直前天文学を物理学賞に入れる事に決めたが彼は無くなっていた1953年)つまり
図の横軸は写真等級であるが、明るさのlogである。ここにプロットされたの星あるいは銀河は明るさがほぼ同じもの(近くをみて解っている)である。距離が異なるために遠くのもは暗い(右へ移動する)。縦軸は速度(正確には視線速度で後退速度である)であり、横軸とは独立は測定である。
つまりHubleは縦軸速さvと横軸距離rに比例関係を見つけたのである。

この事は、我々の見る宇宙の星々、銀河が我々から遠ざかっている事を意味する。しかし我々が宇宙の中心にあるはずはないし、他の星から見た宇宙も同じように遠ざかっているのであろうから、次のピクチャーが考えられる。宇宙には中心はないし、膨張している。ただし、別の観測として一様性がある。その上宇宙の支配力は重力であり、重力には引力しかない。従って宇宙は「重力により引き留められつつ膨張する一様物質系」といえる。
ハッブルの観測の現代版が次の図である。http://yujiwww.web.infoseek.co.jp/space-cosmological.htm

ここで上図は横軸z (redshift)はハッブルの観測結果を信じた後退速度の相対性理論版の値である。縦軸は距離に相当する量である。下図も同じ量を横軸に取り、縦軸は直線からのずれである。データ点は超新星Ia型の観測結果である。図中に線が3本有るのは、次に説明するΩである。ちなみに図中のΩm+ΩΛ=Ω (本文中)である。灰色の線は宇宙が平坦である場合の予言であり、黒はΩ=0.2で開いて永遠に膨張する宇宙であり、赤はΩ=1で平坦であるが、ΩΛ=0 の宇宙である。
さて横軸の赤方偏移(red shift)について説明する。ガスなどの物質から出てくる光の波長(振動数でも同じ事)は連続した分布ではなく、とびとびであることが実験事実であり、これを量子力学は説明する。すなわち原子核の周りにある電子の状態を決めるエネルギーはとびとびしか許されない(固有値問題に帰される)という結論である。エネルギー Eと波長λには次の関係がある。E=hc/λ ここでhはプランク定数、cが光速である。どちらも宇宙の中ではどこでもいつでも定数である。その結果宇宙のガスからでる光を観測する天文学では特定の波長の光りの連なり(飛びとびだが一連の関係をたもった組)を観測して、例えば水素があるなとか、メタンがあるなとかの情報を得ることができる。ところが、その連なりが全体としてずれている現象が発見された。それも赤(波長の長い方向を我々は赤あるいは赤方と呼び、反対に短い方は紫なので紫外と呼ぶ)つまり波長が長い方へずれていた。これを赤方偏移と呼ぶ。観測結果のひとつを示す。

観測結果は一番上のおとめ座からのH+Kのラインを見るとわかりやすい。2番目のおおぐま座からの光の観測では右に移動しているし、3番目のかんむり座からの同じH+Kの光は更に右に移動している。H+Kはカルシウムの発するH線とK線の光の波長である。移動する物体からでた光は静止した観測者(我々)にとって異なる波長として観測される。音の場合ドップラー効果として知られている。よく出る例はサイレンを鳴らしながら走る救急車のサイレンは車が自分に近づくときは音が高く、遠ざかるときは低く聞こえる現象である。それと同じとが宇宙では光でおきる。つまり遠ざかる星からでた光は低いつまり波長が伸びて(赤方へ)みえる。
観測に便利な変数   を定義する。ここで波長 の光が  として観測されるときであるとする。 


一様性は観測により指示されている。すなわち以下の図である。
この図は宇宙のある方向面内にある星や銀河の距離zの関数としてプロットしたもの、明るさは入っていない。z=0.4までのプロットで、黄色の領域は遠くにある。黄色の星あるいは銀河はまばらな訳ではない、一様とは、単位体積当たりの星あるいは銀河の数が一定でああり、さらに宇宙の至るところで一様である方向によらず(これを一様等方という)ことをこの図は示す。

一様な膨張は次のモデルを意味する。ゴムひもモデル(これは1次元で宇宙は3次元である)
ゴムひもに等間隔に記しをつけて1,2,3,4と呼ぶ。ある時間t後にゴムひもをひっぱってa倍なったときを考えよう。図では1番の位置を一致させて描いた。1から見ると2,3,4が自分から離れて行っている。その時1から2を見た速度v12は


最後の3つの式は同じ事を意味している。すなわち  距離rの星の速度は(1/a-1) に比例する。これがハッブル定数Hであると。ゴムひものような伸びはとても自然な動きであり、宇宙膨張はこの動きをしていることにより遠い銀河は速く遠ざかるというハッブル則をいとも簡単に説明する。またゴムひも上のマークを共動座標という。ただし、銀河はこの共動座標上に乗っかった存在として扱われる。空間が伸びているということを共動座標の距離が伸びてゆくaをもって表される。ゴムひもが1次元宇宙空間であり、膨張している。実際は3次元であり膨張しているが、3次元の膨張を解ったような絵で表す事は難しいため、1次元で説明した。
Huble 定数の現在の測定値はおおよそ70km/s Mpc である。 を使ってこれが宇宙の年齢です。このことから共動座標点の速度が光速となる点までの距離は、
(ly : Light Year 光年)つまり130億光年が我々の見ることのできる限界(宇宙の地平線という)となる。実際127億光年遠くにある銀河が見えているので、我々の光による観測はほとんど全ての見えるべき領域をカバーしている。共動座標速度が光速を超えた向こう側からの情報は我々に届く事はないが、存在はしている!宇宙は地平線の向こうにも存在しているのだ。
共動座標をχとして書き直す。倍率を a とすると、位置 r= χa
ここで時刻 t の関数はrとaである、座標点 χ は時刻依存性が無いことに注意。
ちゃんと微分形式で書くと v=Hrが出てくる。ここで ハッブル定数H=( da/dt )/aである。




我々を中心として半径rのところにある質量mの星Aについて非相対論的に考える。この系では半径がrより大きい星々からの寄与は対称性からキャンセルが起こり、系の内側のみ考えればよい。系内の全質量 Mは密度ρを使って次の式で書ける。  系内の力学的全エネルギー(つまり運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの和)Eは次の式となる  これの速度Vをハッブルの式で書き換えていく、また質量は先ほどの定義を使うと、
   ここで  は臨界密度である。であり、陽子7個/m3 に相当する。 これから議論する宇宙の膨張の様子を決定する密度パラメータ  を与える、ここでρは現在の宇宙の密度であるが、直接測定はできない。宇宙膨張は次の式から解る。  ここで右辺は系の全質量Mに依存しない定数である。
このモデル計算では地球から脱出するロケットと同じ議論が適用できる。つまりE<0では地球から飛び出したロケットは、地球の引力圏から脱出できず、戻ってくる。E>0 では十分な運動エネルギーが有るため地球引力圏からロケットは飛び去る(双曲線)。また E=0 では脱出に必要な最低のエネルギーであり、無限遠において速度がゼロになる。軌道は放物線となる。これと同じく E>0 (Ω<1)では宇宙はどんどん大きくなる。開いた宇宙と呼ばれる。 E=0 (Ω=1)では開いているが、平坦な宇宙と呼ばれる。 E<0  (Ω>1)は閉じた宇宙である。宇宙密度ρが宇宙の将来を決める。

(1)Ω=1 つまり E=0 の場合を考える。
=0であり、
 が成り立つ。
ここで、一様宇宙密度つまり密度ρは一定を仮定すると、半径rの球体内に含まれる質量は常に時間によらず一定なので、密度は 宇宙の拡大率 a のマイナス3乗に比例する(物質優勢宇宙の場合)。 すなわち 
また  の表記を用いている。 この方程式  は  の関係があれば常に満たされる。これを満たすaの時間依存性は  により実現できる。この場合   を使って ハッブル定数の逆数が宇宙年齢90億年を与える。

今までの議論は非相対論、あるいは古典論での重力ポテンシャルの扱いで有った。これを一般相対論的に扱うと、つまりN次元の重力理論で扱うと(ここでそれを述べることはとうていできない)偶然にも上記記述と結果が一致する。特殊相対性理論が慣性系(つまり力の働かない座標系)同士の同等性(相対性)を議論した、つまり、全ての慣性系で物理学の法則は同じ形で書かれるという要請に対して、一般想定性理論は、非慣性系つまり加速度系 すなわち重力の働く系について議論する。特殊相対性理論で全ての慣性系を同等と扱ったように、一般相対性理論では、加速度系を同等とみなす、すなわち物理学法則はどの加速度系でも同じ形で書かれるとする。一見奇妙な仮定にみえるが、ツナが切れて重力加速度で落ちてゆくエレベータの中で、物体を落下させようとして手を離しても空中に浮いたままになる。これをある階に静止した系(人)から見ると、人間も物体もエレベータも自由落下しているので、人間と物体の間には重力に引かれて落下しているという同じ現象なので、人と物体は相対的に同じ位置を保つ。一方落下中の座標系(エレベータ中)では、系の持つ加速度に質量を掛けて力が働くと考え、物体には上向きの力と重力の釣り合いが実現して静止していると解釈できる。つまり系が加速度運動するとき系の持つ加速度は力として物体に作用すると、これを見かけの力という。見かけの力と重力の同等性を主張するのが、一般相対性理論である。
宇宙空間を加速度なし運動をしているロケットの中では左からでた粒子は真右の壁に到達する。一方上向きに加速度のあるロケットの中では粒子が左端を出発してからロケットが上向きに加速するため、右端の壁での到着地点は下側へずれる。
では質量の無い光の粒子=光子でも同じことがおきる。ということは光も重力(=加速度の存在)の元で曲がるのである。上の図では左端白点から出発した粒子(質量によらない)が右に移動する間にロケットが上へ加速度運動するため、右端に到着したときは、壁としてはロケットの後ろ側部分に着く、すなわちロケット内部の観測者に取っては実線の飛積を描いて光が移動した。つまり曲がった!と見えるはずである。実際には光の速度は大きいため観測される曲がりは極小さい。また太陽の後ろにあって、本来なら見えない星が見えることが観測された。
これをどう解釈するか、太陽付近の強い重力場で光りが曲げられたというのである。
そもそも重力は質量に働くもののはずであるが、ここに来て質量のない粒子にも重力が働くというのだ、これは空間の曲がりと解釈される。図で書くと大きな質量の周りでは空間がひずんでいる。
x−y水平面内の中心点に太陽がある。空間のひずみは3次元のz軸方向に取った。重力は空間をひずませる別の例。左右2つの玉は落ちてゆくにつれお互いの距離が小さく近づく。これは力が働いたともとれる。これを重力場のゆがみとするわけである。このひずみは地球が存在するために生じたものである。

一般相対性理論は、すなわち重力と空間の曲がりを説明する。一方宇宙の空間としての曲がり方はΩが決める(最終的には宇宙の物質密度ρ)という筋書きとなるわけである。

インフレーション宇宙は Ω=1を予言する。




Ω=1の実証
宇宙背景輻射の観測
(1)Huble 望遠鏡の観測
(2)Boomlang/MAX
(3)Wmap

Ω=1の成分は、5%物質、23%ダークマター、73%ダークエネルギー
  ダークマターとは
 見えない(光らない)物質が少なくとも局所重力系である銀河の周辺部にある。これは銀河の回転曲線から解った。銀河が CD/DVDのような円盤状でかつ堅い板上だったとしよう。一定各速度ωで回転するとき、中心からの距離rと速度の関係はv=rωという比例関係が成り立つはずである。ところが観測結果は次のような図である。
図の横軸は銀河中心からの距離rであり、縦軸は回転速度である。右あがりの比例関係はrのごく小さな領域でのみみられる。rが大きくなると一定となっているというのが観測結果である。一定速度を説明するには、銀河の質量Mを中心からの距離の関数 M(r)として、向心力=万有引力 という式を速さvについて解くと、 となる。
vを一定に保つためにはM(r)がrに比例していれば成り立つ。
半径rの内側にある質量が半径に比例すればよい。一方光を見る限り中心が最も明るく外側に行くにつれて銀河は一般に暗くなる。ということは、光らない物質が銀河の外側にごちゃまんといると言うことになる。
仮説(1)岩だ、光らない星あるいはその残骸みたいなもの、
  MACHOとして観測対象になったが、量は圧倒的に不足している。
(2)相互作用をほとんとしない粒子である、(中性)
   現在探索中で、最もその可能性が高そうなものが超対称性粒子である。

一方銀河に大量の見えない物質(暗黒物質=ダークマター DarkMatter) が有るとしてもその宇宙での総量は23%(Ω=1として)程度である。また光る星や銀河の物質量は4%(Ω=1として)程度である。とすると残りは何なのか?ダークエネルギーと呼んでいるが、正体はまだ皆目見当もつかない。

big bang