竹下徹の応用電磁気学II-2002 第四回

4回路の実現:トランジスターとダイオード

論理回路のモデルとしてスイッチ・ランプ・電池を扱った。
このとき、計算機のなかで一体 何が、あるいは、誰がこのスイッチを押すのか?
計算機の一連の電気回路の中でスイッチを”押す(1を与える)”あるいは”引く(0を与える)”作業を電気的に実現する素子が必要である。このために、歴史上は、リレーー>真空管ー>トランジスタと進化してきた。

トランジスタについて述べるまえにまず原子とは

原子は、中心の原子核がほぼ全質量とプラスの全電荷をもち、周りに電子を(複数:全負電荷)配置する量子力学的存在である。量子力学では、1個の水素原子の場合シュレデインガーの方程式を解けばエネルギー準位が得られ、実験とあっている(これが量子力学を信ずる理由の一つツだ)。がしかし一般の原子にこれをあてはめて複数子の電子の状態を量子力学的に記述することは、難しい。しかし原子から出てくる光の波長がとびとびであることから水素と同じようにエネルギー準位があることが容易に想像つく。角運動量ゼロのr方向の最低エネルギー状態1Sから、次が2S,その次が、角運動量1を持った1P,さらに角運動量ゼロでr方向の励起状態3S,これに角運動量1を持った3Pと名付けられた電子の状態のエネルギーは高くなる。ーーー>右図原子内の複数の電子は、エネルギーの低い1Sから順に埋まってゆく。例えば原子番号5のB(ホウ素:ボロン)では1Sに2個(電子はフェルミ粒子であるので、同じ状態を1つの電子でのみ占めることができる、しかしスピンがあるため、2個が同じエネルギー準位に入る)、さらに2個が2Sに入る、次に残り1個が2Pを占める事となる。 角運動量1のP状態には、z成分が(-1, 0,1)の3通りがある。つまり自由度が3個ある。 電子はここにそれぞれ、スピン上向き、下向きで入り、計2x3=6個収容できることになる。

トランジスタに近づく2歩手前:半導体とは

トランジスタは半導体と呼ばれる電流の通し安さが、導電体(金属)と不導体(石、木など)の中間に位置する物体からなる。半導体としては、シリコン(Si, A=14:1S(2),2SP(8),3SP(4) 電子状態)に不純物をませたものがある。シリコン原子は原子番号14で14個の電子を持つ。一番エネルギー順位の低い基底状態である1Sに電子が2個(スピン上、下)入る。次のエネルギー状態である2Sにやはり2個、2Pに6個、(ここまでで、10個;残り4個)、さらに高いエネルギー順位の3Sに2個、次に3Pに2個入る。
次の図のように見てきたようなうその原子の中の電d子配置図をみたことがあるかもしれない。2SPに(2+6=8)8個の電子を1Sの外に配置し、されらにその外に3SPを8個置いている、、、これは原子番号18番のアルゴンである。このように入るべき所すべてに電子が入っていると、化学反応の主役である最外殻電子が動きにくいのフで、化学反応を起こしにくい、つまりアルゴンは不活性であると説明される。逆にこのモデル化でシリコンは、最外殻に4個の電子を持つこととなる。このモデルのように3SPには8個の電子をもつと安定であると考えられる。このシリコン原子がたくさん集まってきて結晶を作たっらどうなるだろうか? 右図では最外殻の電子のみ示した。

隣りのシリコン原子の電子を自分のものと思いこむ事を上下左右4方向の原子としたら、(このとき、自分の電子を他の原子に貸し出すことも行っている)全体として調イ和のとれた安定状態が生まれそうだ。このようにお互いの電子を出し合ってお互いに安定になることを共有と呼ぶ。これが実際存在して結晶となる。トランジスタの1歩手前:半導体

さてこのシリコンの純粋結晶を作るときに、不純物を混ぜてみる。不純物にリン(P,原子番号15)を入れよう。
電子が1個あまる!これが電流電子(自由電子)となる。
このようにシリコンに少量の不純物を加えて結晶を作ると、少し自由電子を持った、少し電気を通りやすい物体(半シ導体)ができる。
リンを入れたように電子(マイナス=negativeの電荷)のあまらせた半導体をn型半導体と呼ぶ。(nはnegative)

またリンのように電子のあまりを作るのではなく、不足を作るには、例えば ホウ素(B、ボロン原子番号5)を不純物としてシリコンに混ぜて結晶化さウせると、電子がかけた欠損が起きる。この欠損は始めはホウ素が持ち込んだ物であるが、そこをよその原子の電子が埋めると欠損はよそへ移動し、動き回ることができる。この欠損はたかもプラスの電子のごとく見える。つまり正電気を持った電気伝導物質とも考えることができる。
よってこの型の半導体は、p型半導体と呼ばれる。pはpositive=プラスの意味である。
この意味でn型半導体には動くことのできる少量の電子が存在し、p型半導体には動くことのできる少量の正の電子(hole、ホール、あなとも呼ぶ)が存在する事になる。これを図にすると次のようになネる。ホールと電子のように電流の元をキャリアともいう。 トランジスタの1歩手前:ダイオード

n型半導体とp型半導体をくっつけたら(接合とよぶ)どうなるか?  お近くの 負の電荷を持った電子(黒丸:●)と正の電荷を持ったホール(白丸:○)はお互いにクーロン力で引き合い、移動し、くっつき、無くなる!でしょうね。
おそらく端っこ近くにまだ電子やホールは残るでしょうが、真ん中の境界付近には、電子もホールもない領域が残るでしょう。これを空乏層と呼ぶ。

さてこれに左右から電圧をかけてみましょう。左端がプラスになった場合、なかの電子は負の電荷なので、引かれて左へさらに集まります。同様に右側では、プラスのホールが右のマイナスの電位に引かれ移動し、ますます真ん中にはなんにも無くなります。電流を測っていると、最初電子やホールを消費する間は流れますが、少量でその後流れ無くなります。

その反対に右端がプラスになった場合、なかの電子は負の電荷なので、端の電位マイナスに反発して右つまり中央よりへ移動します。同様に右側では、プラスのホールが右のプラスの電位に反発して左中央よりへ移動します。両者が中央に集まると、プラスのホールとマイナスの電子は消滅して無くなってしまいます。しかし、これは外から見ると電流が流れたように見えます。
また左のフ端から電子が供給されるので左の端にでてきた電子は右へ流れてゆきます。同様に右端ではホールが供給されると考えて良いので、同じ事が起きます。

これが電圧のかけ方により、一方向しか電流の流さない「ダイオード」です。回路図では、右図のように書きます。右のp型半導体から左のn型半導体へさんかくマークは電流(プラスの電荷の流れ)方向を示しています。


フォトダイオード、
発光ダイオード、整流ダイオード
等がある。