物理実験学

竹下徹 


中心極限定理

確率変数xi (i=1,2,...N)が同じ分布(平均値<x>,分散sx2)に従うとき、(前回の宿題で一様分布にしたがう乱数を作ったはずだ、その一 個一個が確率変数xiである。)新しい別の確率変数X, X=(x1+x2+....+xN)/N
はNが充分大きいとき、ガウス分布に従う。このガウス分布の期待値m=<x>,また分散s2 =sx2/N である。
  これが中心 極限定理である。
つまりN個の平均(中心:物理の言葉では重心)充分大きなNの極限で示す分布に関する定理というわけである。 大きなNになるとXのばらつき(分散s2、あるいは標準偏差s)はs^2 =sx^2/Nの形で 相対的に元の分布xi の分散sx^2より小さくなることが特徴である。宿題で見たように一様分布からガウス分布がでるのだ!実は任意の確率分布をするxiに対して Xはガウス 分布する事が判っている。
ある量の測定を行うとき、たくさん(多数回)測れというのは、この法則に基づいている!!!4倍の測定回数をこアなすと、標準偏差sはsxの1/2(半 分)になる!なぜならs^2 =sx^2/Nなのでs =sx/sqrt(N ) であるから。
また実験測定で種々の測定精度分布を持つ量を統合して答えを求めるときには結果はほぼ必ずこの中心極限定理により、ガウス分布する。だからガウス分布が大 事なのだ。
もとの分布(確率変数xi (i=1,2,...N)の分布)がガウス分布の場合、中心極限定理は極限(充分大きなN)を取らなくても任意のNについて成立する。

確率変数xi (i=1,2,...N)が平均値, 分散)に従うとき、(前回の宿題で一様分布にしたがう乱数を作ったはずだ、その一個 一個が確率変数xiである。)新しい別の確率変数X, X=(x1+x2+....+xN) : つまり和の分布
はNが充分大きいとき、ガウス分布に従う。これが中心極限定理であり、色々な分布をする変 数(xi)があったとしても足し挙げた量〔X〕は結局ガウス分布をするというのだ!!!

また中心極限定理は、このガウス分布の期待値であ り、またこのガウス分布の分散はであると教える。まずガウス分布の期待値がであることを示そう。

次にガウス分布の分散 である事を示す。であるから、こ こで最後から3つ目の式のはcovarianceであるが、xiとxj が独立なら相関はないためゼロである。この式の特別な場合(世の中ではしばしば起こるのだが)として同じ分布から変数を引き出す場合がある。

確率変数xi (i=1,2,...N)が同じ分布(平均値,分散)に 従うとき、(前回の宿題で一様分布にしたがう乱数を作ったはずだ、その一個一個が確率変数xiである。)新しい別の確率変数X, X=(x1+x2+....+xN)はNが充分大きいとき、中心極限定理によりガウス分布に従う。このガウス分布の期待値であり、分散で ある。このことを乱数実験(確率変数xi (i=1,2,...N)が一様分布のとき)を使って示す。
乱数がランダムかどうかは、すでに議論した、これxiを使ってN=12の時の平均値をXとして、その分布を確かめる。ちなみにxiが0〜1.0の一様分布 する乱数のとき、
平均値,分散で ある。12個の乱数の平均値を100回とったヒストグラムが下である。平均値<X>=0.505, 分散s2 =0.0091となった。0.083/12=0.0069100 個ではやはり不足(充分大きなNに対して成立する式のはずなので)かもしれないので、1000000回実行してみる。平均値<X>= 0.500, 分散s2 =0.0069となった。

付録:実験精度について
物理の測定結果は例えば*などとかかれているのを知ってますか?測定値はここでは87.23であることはあきらかですが、この*は何を意味しているか知っ てますか?
一般に * こう書いたときは、*は測定値の精度を表しています。ここで言う精度とは、(当然)複数秤ェ定を行ってその結果の分布がガウス分布するとし て、(実際確かめる必要がありますが、いずれ演習問題としてやってもらます)そのガウス分布の標準偏差sの1倍をもって*と与えています。ですからこれが 定義です!またxはガウス分布することからその平均値を使うことができます。中心極限定理で述べたように種々の分布をする量から計算される結果は、ガウス 分布すると考えられます。ですからこの仮定が妥当であり、測定結果を*のよ謔、に表すことの意味がはっきりします。
ただし、結果xは単純なヒストグラムから出てくる物では無い場合があります、それはこれから議論します。
ガウス分布をすると考えていますので、次回1回だけ測定した結果x1が*の範囲に来る確率は68%、また

*の範囲に来る確率は95%です。くどいかもしれませんが
*の範囲に来る確率は99.7%です。このように*の何倍かを目安として測る事ができます。ですからこの*が測定の精度を表し、小さいほど精度が良いと呼 ぶし、反対に大きいほど精度が悪いといいます。上の例でも判るように測定値の信頼度を表す量が精度で有り、精度の悪い結果*(*が大きい)は信頼されませ ん。

誤差のことを、真の値と自分の測定値の差と思っている人はいませんか?
真の値ってなんですか?測りたいものの本当の値を真の値とするならそのものは存在しますが、我々には判りません。ただあることを信ずるのみです。ましてや 他の人が測った値が真の値とは限りません(例痰ヲば地上での重力定数g=9.8N/kgは決して今測ったあなたの測定の真の値なんかではありませんし、こ れは誤差ではありません。ここでは誤差という言葉が誤解を生んでいるようなので、誤差=精度という言葉のみでとおします。

おまけ:
有効数字のある計算:左の2つの数字は有効精度を考えた値です、
  次の演算を施して得られる結果は矢印のように丸めるべきであろう。

35.4 + 0.354 = 35.754 --> 35.8   :35.4の小数点下一桁まで有効
15.4 - 8.395 = 7.005-->7.0     :15.4の小数点下一桁まで有効
35.4 x 2.016 = 71.3664 --> 71.4   :35.4の3桁が有効
354.54 x 21. = 7445.34 -->7.4x103 :21の2桁が有効
3545.4/253.0 = 14.0134 --> 14.01 :253.0の4桁が有効
0.3545/8.64 = 0.04103 --> 0.041 :8.64の3桁が有効

ガウス分布が関与する問題

(1)平均値がa,分散bのガウス分布のグラフを描け、a,bは各自が与えること。
(2) Xが平均値12、分散25に従うとき、次の確率を計算せよ。
    10=<X=<15
  |X-12|>6
   X=<Y の確率が0.9となるYを求めよ。
(3) X1,X2,,,,XNがガウス分布で平均値m,分散s2に従うとき、 分 布は
    ガウス分布の平均が,分散が に従うことを示せ。

(4) 2つのポアソン分布でも(3)と同じ問題ができることを示せ。


中心極限定理 を数 学的に示してみよう:フーリエ変換と特性関数の知識が必要 !